雅楽でもっとも有名な曲、『越殿楽』(えてんらく)
『越殿楽』は『越天楽』ともいわれ、現代において最も親しまれている雅楽の曲になります。
いま、一般の方に「雅楽」で聞いたことのある曲は・・といわれると、かろうじて『越殿楽』のフレーズしか思い浮かばないような感じです。
『越殿楽』には3つの調子がある
『越殿楽』にはよく知られている
・「平 調」(ひょうじょう) E(ミ)音を主音にする調子 の曲の他に、
・「盤渉調」(ばんしきちょう)B(シ)音を主音にする調子 と
・「黄鐘調」(おうしきちょう)A(ラ)音を主音にする調子 の曲が伝わっています。
親しみやすい民謡調のフレーズを持つのは平調(ひょうじょう)の曲になります。
雅楽の曲は目的の曲を演奏する前に、その調子を表す「音取」(ねとり)という短い曲を演奏して、その場の雰囲気を整えてから演奏する習わしとなっております。
『平調音取』~『越殿楽』演奏
令和3年7月4日 吹き枝会発芽記念コンサートにて https://fuki-e.com
演奏:礼楽研究会 https://reigaku-ken.com
龍笛 山下裕嗣 篳篥 大畠暁人 鳳笙 布谷彩菜
『越殿楽』の3つの調子はメロディーがちがう⁉
雅楽の曲は調子が変わると、全体のメロディーまで変わってしまいます。
これは、楽器の音域が狭いので、キーチェンジをするといきなりオクターブを上下して音階を追っていかないといけなくなるので、それぞれの調子ごとにメロディーを再構築するのでまったく違う曲になってしまいます。
『黄鐘調音取』~『越殿楽』演奏
令和4年7月9日 吹き枝会 芽吹きコンサートにて https://fuki-e.com
演奏:礼楽研究会 https://reigaku-ken.com
龍笛 山下裕嗣 篳篥 大畠暁人 鳳笙 布谷彩菜
『越殿楽』は特殊な曲?
平調と黄鐘調の『越殿楽』を聞き比べると、とても同じ曲とは思いもつかないでしょう・・
平調の『越殿楽』の譜面での1・2行目まではほかの雅楽の曲にはない民謡調のメロディーなのですが、3行目は一転して一般的な雅楽の旋律になります。
ですが、黄鐘調・盤渉調のものは終始雅楽調です。
個人的には、昔からあった民謡のメロディーに雅楽の旋律を付け足して格調高くしたものが、現代に伝わっている『平調越殿楽』なのだと考えています。
雅楽の習いはじめには、どうしてもなじんでいるメロディなので、とっかかりとして平調の『越殿楽』から始めますが、特殊なメロディーで構成されているので、結構難しい曲だと思います。
昔からどの調子が原曲か?ということで論争があるようですが、私はやはり特徴的な平調が原曲だと思っています。