演奏

朗詠『嘉辰』(かしん)を詠う

雅楽には歌もある?

雅楽」は楽器での演奏(琵琶・箏の糸ものがあるので、「管弦」という)や、「舞楽」(ぶがく・舞人と楽器で演奏)のことだと思われがちですが、なにせ、平安中期にあった音楽がまとめられたものなので、その中には歌もあり、さらに「朗詠」(ろうえい)と「催馬楽」(さいばら)に分けられています。

演奏:礼楽研究会 【礼楽研究会HP】https://reigaku-ken.com
令和6年4月28日 金沢市ガルガンチュア音楽祭、尾山神社にて演奏いたしました。

最古のカラオケブック?『和漢朗詠集』

「朗詠」とは、10世紀ごろ貴族社会で流行した、漢詩に節づけをして謡う楽曲の事を指します。 現在伝承されている朗詠は14曲のみですが、最盛期は百を越す曲があったようです。
『和漢朗詠集』は藤原公任(966-1041)撰の詩歌集で、寛仁2年(1018)ころの成立と考えられています。もともとは藤原道長の娘威子入内の際に贈り物の屏風絵に添える歌として編纂されたといわれています。
その中には朗詠するにふさわしい漢詩文588詩の秀句および和歌216首を、125項目に分類・収録されています。

平安の歌唱、『嘉辰』

現在残っている他の朗詠は漢詩を訓読して唱和しますが、この『嘉辰』(かしん)は音読で唱和します。
隋朝の詩人謝偃の作といわれており、 独唱と斉唱で「嘉辰」(かしん)「令月」(れいげつ)、「歓無極」(かんむきょく)、「萬歳」(ばんぜい)「千秋」(せんしゅう)、「楽未央」(らくびよう)と詠います。

「このめでたき良き日に、歓びは果てしない。万歳千秋を祝って楽しみは尽きることがない。」という内容で、特におめでたい席で歌われる曲であったようです。

聴いていると、一つの音節が長いので、途中で歌詞がどこかわからなくなるのですが、当時は会話のスピードもゆっくりしていたのか、はたまた有名な詩なので当時はこれが当たり前なのか・・

現代人は子供の頃から西洋的なのが当たり前でカッコよいものであると叩き込まれているので、なかなか馴染むまで時間がかかりますが、世界中見回しても一千年も前の音楽を詠えるなんてことは奇跡的なことなのです!

この『嘉辰』は、数ある朗詠の中でも音域が歌いやすいので、平安にタイムスリップしたつもりで聴く(詠う)のも一興ではないでしょうか。

 

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